温泉の歴史

私たちが愛してやまない「温泉」。その起源はどこにあるのでしょうか? 
温泉の歴史を、古代から現代にいたるまで大まかにご紹介します。
古代の温泉
温泉というのは、火山活動が盛んな地域で自然とわき出すものなので、温泉そのものは、人類の歴史よりずっとながいということになります。では、私たちが温泉を、温泉として意識し始めたのは、いつごろからなのでしょうか?

日本で最古の文献といわれている「古事記」・「日本書紀」には、温泉の記述があるといわれています。その他、「風土記」にも温泉の記述があるものがあるのだそうです。 古事記・日本書紀・風土記に記されている温泉には、「伊予の湯=愛媛県・道後温泉」・「有間の湯=兵庫県・有馬」・「牟婁の湯=和歌山県・白浜温泉」があります。この3つの温泉は、「日本三古湯」と呼ばれています。

その後、「万葉集」にいたっては、長野県・上山田温泉や神奈川県・湯河原温泉などが紹介されています。
中世の温泉
時が移り変わって、1192年に源頼朝が鎌倉幕府を開きました。京都から関東に政治の中心が移ったあと、関東・東海・東北・甲信越にある温泉地が文献には登場するようになります。温泉地の様子なども、史実として多く伝えられるようになりました。
熱海温泉・伊豆山温泉(静岡県)で「伊豆の走湯」と呼ばれていた温泉には、武士・高僧などが湯治した記録が残っていることから、湯治場としての機能を備えていたことがわかります。その他、湯宿が上州の伊香保温泉(群馬県)にできたのも鎌倉時代だといわれています。 たか狩りのときに源頼朝が入浴したといわれている(定かではありません)上州の草津温泉(群馬県)には、今でも共同浴場のひとつに「白旗の湯」という名称が残っています。
近世の温泉
徳川家康が1603年に、江戸幕府を開きました。これから約300年もの間続くことになる時代。それが、「江戸時代」です。
当然、江戸時代の文献には数多くの温泉が名を連ねています。大名が湯治したといわれている温泉も少なくありません。面白いことに、当時は「御汲湯」という職業があり、草津や熱海といった温泉の湯を江戸城に運び、それを沸かして将軍を入浴させていたそうです。 一般庶民が温泉を利用するようになったのも、この江戸時代です。ただし、庶民は、湯治願いを提出して、許可がおりてから温泉を利用していたようです(ちなみに、滞在期間は3週間程度)。 江戸時代に、実際どれ程の温泉地が存在していたのかは、未だに定かではありません。しかし、「温泉番附」という江戸中期に発行された史料では、約100ヶ所の温泉地が掲載されています。
近代の温泉
300年にもおよぶ江戸幕府が終わりを迎えます。1868年の明治維新で、大政奉還が実施されたのです。このころ、欧米からの文化・技術が多く輸入されました。
そのひとつに、ドイツ人医師ベルツ博士による「ドイツの温泉医学」があります。ベルツ博士は、群馬県の草津温泉や伊香保温泉、神奈川県の箱根温泉などで温泉地づくりの指導をしました。この功績からベルツ博士は、「温泉医学の父」と称されています。 明治時代には、行政的にも温泉を取りあげるようになりました。日本ではじめて温泉の全国調査が実施されたのです。そして、明治19年に「日本鉱泉誌」が発行されました。 明治時代は、資本主義経済が発展した時期です。それにともない、湯治場から保養の場へと温泉地も発展していきました。さらに、新規掘削の温泉開発が進められたことにより、大分県の別府温泉・静岡県の熱海温泉・神奈川県の箱根強羅温泉などが大きく発展したのです。
大正期は、別荘地が開発され、保養地として機能する温泉地が現れてきます。 昭和に入ると、鉄道整備が発展し、都市部から温泉地への便利性が上がったこともあり、多くの人が温泉を利用するようになりました。東武鉄道沿いの鬼怒川温泉・高山本線沿いの下呂温泉・上越線沿いの水上温泉・小田急線の整備で箱根温泉などがこの時期に発展した温泉地としては有名です。
そして、日本は第二次世界大戦に突入することになります。温泉地は、疎開児童の受入れ、または傷病兵の療養の場所となりました。
現代
昭和20年に、第二次世界大戦がやっと終わりをむかえます。戦後復興の時代に突入したのです。温泉地には、米を持参して湯治に訪れる人が多かったといわれています。
高度経済成長とともに、温泉も大きく変化していきます。景気がよくなり、多くの人が温泉地に訪れたため、宿泊施設は大型化。鉄筋コンクリート造の宿が増えて、温泉街のビル化が始まりました。さらに、外来資本が参入することで、新しい宿泊施設も多く建設され、温泉地はもはや湯治場ではなく、観光地へと変貌をとげたのです。 道路交通整備・鉄道の高速化などにより、温泉地への交通の便がさらにアップ。鉄道だけではなく、観光バスも運行するようになりました。そして、「温泉ブーム」の到来。多くの施設で多額の設備投資をしました。
そしてバブルの崩壊を迎えます。しかし、バブルが崩壊した後でも、宿泊客は減少したものの、温泉地には数多くの人が訪れています。現在では、消費者の本物志向が強まり、本物の温泉が求められるにいたっているのです。

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